佐久市の事業仕分けに学ぶ

20101016 佐久市で開催された事業仕分けを見学に、隣町の職員の方々と一緒に全36事業を2日間かけて、会場である「あいとぴあ臼田」の2つの会議室を使い行われた。 今回は16日のみに出席。


「佐久市 事業仕分け」を実施しました。(平成22年10月16日・17日) | 佐久市ホームページ
佐久市ホームページより


1つの会議室の中には、普段の職業は自治体職員や議員などである「構想日本(政策シンクタンク)」のメンバーが、「コーディネーター」と4人の「仕分け人」を務め、それ以外に約24名の市民からの公募と無作為抽出による「市民判定人」がいる。

1)まずコーディネーターの司会で始まり、佐久市側からは事業説明担当者として3名が出席、そのうち責任者と思われる課長や係長が事業説明(15分ほど)


2)その後、仕分け人から事業担当者へ25分程度質疑応答が行われる。

3)また事前には市民判定人から質問状をもらっており、コーディネーターがそれを事業担当者に説明する場面もあった。

4)最後には、仕分け人・市民判定人が評価シートに基づきチェックを行い、「市民判定人」⇒「仕分け人」の順番に、≪廃止≫、≪そのまま存続≫、≪国・県・広域が担う≫、≪佐久市要改善≫の4つから挙手を行い、多数決にて評価が決定する。最後にはそれぞれの判断をした仕分け人、市民判定人から意見を聞く。

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「構想日本」のメンバーの方々は、ありとあらゆる分野の事業についての知識が無いと深まらない。その知識の広さと深さは本当に驚いた。これはなかなか普通の人では務まらない。




また、説明する際に仕分け人が共通して指摘した部分は以下のとおり。


1)「説明データの少なさ」

2)「現状把握の不足」

3)「事業の対象や目的の不明確」※これがあいまいなため「事業を行うことが目的」になってしまっている、という指摘。

特に上記の事に関して僕が印象的だったのは市勢要覧発行事業についての場面だ。佐久市では要覧の作成の目的を「定住促進」「企業誘致」「国際交流」と設定していた。コストは1冊あたり1,000円強。仕分け人からは以下のような情報が…


・豊田市では情報を簡略化し、その分多量のPR用のパンフを作成し内外の住民へ多く配布することを目的にし、豊田市のPRを行っている。そのコストは1冊100円もかかっていない。またWEB上でPDFでも公開している。

・横須賀市は400ページを超える、ありとあらゆる指標等が掲載しているもの。しかもこれは基本的には「職員向け」。他の部署の知識やデータを共有するために使用している。1冊1500円。さらに課長級は毎年必ずこれを購入する。また企業などはこれを入手すれば横須賀市の現状等も全て把握できる。

・それに対して佐久市の要覧発行の目的はあいまいではないか?そもそも町内外の住民や企業の方々が、「どこで」「どのように」この要覧を入手できるかPRしているか?企業誘致や定住促進のパンフは別に存在する。配布する対象を絞った方が効果的・かつ効率的ではないか?

僕自身も同様の事業を担当しているため、冷たい水をかけられた感覚だった。まさに前例踏襲で仕事をしてきた自分に浴びせられている言葉のようだったのだ。




また、他の事業についても

「私の部署のことではありませんので...」

「その件については企画担当が方向性を出し、私たちはそれに基づいて仕事を...」

「法律的には...」と担当の職員の方々が答え、

それに対して

「市全体として事業を効果的に行うには、横の連携をもっと進める必要があるのでは?」

「担当者としてはどのように考えていますか?」

「法律的には逆にこうではないでしょうか?」と仕分け人から追求され、答えに詰まる場面もあった。




また、事業仕分けを今回直接見たことで、いくつかの問題点も感じている。


1)1事業40分、この時間は十分なのだろうか?仕分け人からも指摘があったとおり、検討するには資料が不足している場合もある。その条件で40分で評価することが果たして十分だろうか?

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2)仕分け人やコーディネーターの視点がぶれた場合に、どのように各種事業の評価を整合性を図るのか?(そもそも論から始まる場合といきなり費用の話から入る場合があった。)

3)市民判定人には当日までに勉強会や研修会を開催したと聞いているが、それでも仕分け人とのバランスが難しい。また多数決で評価結果を決めることがそもそも妥当なのか?

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4)国と地方の事業仕分けの違いが明確に。国の事業仕分けは、仕分け人に国会議員が入っている。しかも国会は議員内閣制であり判定結果が直接政策への反映される可能性が大きい。それに比べて地方自治体の事業仕分けの場合は仕分け人・判定人は構想日本のメンバーや市民である。また地方自治体は二元代表制である。そのために地方議会の役割と地方自治体における事業仕分けの関係はどうなるのか?

当町で取り組んでいる「行政評価」は、今回の事業仕分けとは全く逆のスタイルをとっている。現状や目標を数値化することはあくまでも「見える化」が目的であり、決して「数値至上主義」ではない。また短時間での多数決ではなく、庁内職員の「対話(Dialog)」や(時には)言い合いの中で、組織内に自ら「気づき」「改革・改善」していくという風土づくりを行うことが目的だ。それが本来の行政評価導入の目的であり、目指す先は「人の育成」なのであると思う。





また今回の佐久市からの情報発信については、県内の市町村に事業仕分けについての案内を出すなど積極的であったことは大変勉強になった。当日も基本的には写真等はOK。ただし、その後の使用方法については個人で留意するように、とのことであり、会場からはUstreamにてインターネット回線を通じてLIVE発信され、またTwitterにて盛んに意見交換が行われていた。このような情報発信の手法もだんだん主流になりつつある。

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長野県でも今後「信州型事業仕分け」が導入されると思われる。どのような形になるのかはまだ明確ではないが、事前に直接肌で感じることができた貴重な体験だった。


資料

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