「ヒーローを待っていても世界は変わらない」レバレッジメモ


 湯浅誠さんの「ヒーローを待っていても世界は変わらない」を読んだので、そのレバレッジ・リーディングメモを。
 民主主義、という難しいテーマをわかりやすい表現と湯浅さんの体験から書かれているもの。ぜひ、どんな人にも読んでもらいたい本の一つ。
 年越し派遣村などの行動で有名な人ですが、民主主義という切り口からソーシャルワーキングの本当の意味、そして現在の強いリーダーシップを発揮する人への待望論について警鐘を鳴らしています。

「ヒーローを待っていても世界は変わらない」レバレッジメモ


民主主義
誰かに任せるのではなく、自分たちで引き受けて、それを調整して合意形成していこうとするもの
まず、何よりも、おそろしく面倒くさくて、うんざりするシステム
国民主権は民が主だという民主主義のバリエーションの一つ
言い換えれば、主権者は下りられない
王制・貴族政⇔間接民主主義⇔直接民主主義
完全に任せるか、選んだが白紙委任ではないというバランスの中で、両方に揺れていく
調整責任と決定権限はセット
調整はめんどくさいが嫌だ、でも決定させろ、はもう反対側に同じ人がいる以上は、成立しない
もし調整を放棄し、自分と違った結論になろうとも、自ら招いた結果
お任せ民主主義、上申主義
選挙で選ばれた水戸黄門
成立には3つの条件
勧善懲悪
正しい判断
全員が結果を受容
巨大なグレーゾーン
現実的には無理、また現実的には折衷的な裁決が提示
それにより、論点が本質より外れ、枝葉末節の議論が謳歌するように
自分たちで考える民主主義へ
必要なこと
競争環境をより過酷にするのではなく、人と人をつなぎ、その関係を結び直す工夫と仕掛けを蓄積
地味だけど、調整してよりより社会を作っていくという粘り強さを持つ人
そういう人を沢山増やすこと
自分自身がそういう人になること
橋下市長への期待の背景
現状
水戸黄門型ヒーロー、ストーリの不在
だからこそ、人はこれを求める
例:小泉改革、政権交代
政治不信の質的変化
ここの政治家、ここの政党などへの体質や問題や内紛への不信から「決められない政治」
すなわち政治システム(今の日本の民主主義)への不信
今の人が求めるもの
どんな猫でもネズミを獲るのがいい猫
一番の危機は「人」ではなく、そのような考えが生まれてくる「土壌」

「壊す時には、壊す前にその建物がなぜ建てられたか考えてみよ」
ガラガラポン要求の危険性
消費社会の焦りに通じるもの
人々の生命と暮らしを軽視する飛躍
最善を求める熱心さの反面、最悪を回避することに対する無頓着さ
民主主義の空洞化・形骸化の結果
疲れる民主主義というシステムを、私たちが引き受けることが出来なくなっている証
民主主義と面倒くさくて、うんざりして、そのうえ疲れるという、切ってもきれないことを切り離そうとした結果
ヒーロー待望論心理の2つの問題
私たち自身、そして社会利益に反する点→気づいたら自分もバッサリ切り捨てられる
多くの人が大切にしたいと思っている民主主義の空洞化・形骸化を促進してしまう点
背後にある格差・貧困問題
溜めのない社会
溜め
人を外界から守ってくれるバリア、お金、人間関係、やる気
貧困と貧乏
貧乏…お金(だけ)がないこと
貧困…溜めがないこと
溜めがない社会は連鎖的に溜めの無い人を増やしていく
全員が被害者
いわゆる勝ち組にも影響を
競争主義的社会への恐怖とストレス
余裕を奪う
前述のヒーローを望む「土壌」となる社会
格差・貧困問題の広がり⇔民主主義の空洞化・形骸化

「青い鳥」は見つからない
ネクスト小泉、ネクスト橋下、ネクスト民主党…非生産性なサイクル
これが政治不信を深化させているなら、悪化のスパイラルと言わざるを得ない
このサイクルそのものを対象化、相対化する必要がある
ヒーロー探しを対象化・相対化するには?
民主主義のあり方を考える事
民主主義とは物質的な問題
以下の2つをどれだけ確保できるか?
学んだり、意見交換したり、議論するための時間
またはそのための空間
本当の意味での民が主の民主主義を深め、自分たちで意見調整し、合意形成し、誰かに決めてもらうではなく、自分たちで決めるには?
民主主義の活性化・深化、地域や社会の活性化のために
時間と空間→参加
社会参加、政治参加の可能な条件
時間と空間が参加の前提条件
参加の形態や場の性質はいろいろあっていい
参加のバリアの除去
バリアフリー
ダイバシティ
ユニバーサル
本人の気持ち次第=自己責任論の落とし穴
成功する人もいる、苦境からやり直せる人もいる
だからといって、それが出来ない人を放置しておいていいのか?
社会としてはうまく回らないだろう
物事を意識(気持ち)の問題で片づけない
制度がある、それが周知されている、それがあって初めて意識の問題を問うことができる
世に訴えるつもりがあるかないかを問う前に、まずはやり方を広めていく必要がある
本当の意味で選択の自由を提供できる社会になって初めて「あなた次第ですよ」と言えるのではないか?
空間と時間(参加)の問題として考える
参加のバリアは誰が下げるのか
私たちの仕事=世の中の矛盾を引き受ける行為
「既得権益」に見えるということ
言い放つ人と言いたくても言えない人
言い放つ人はある意味「参加」が少しでも出来ている。
ただし参加のハードルがあるために、参加のかなわない人もいる=ゆえに「ないもの」と扱われがち
この人たちにも「必死の生活とニーズ」がある⇒それは、声を出せる人たち、聞いてもらえる人たちへの不公平感へ
→そこに切り込むヒーロー待望論へ
→これが進むと、「声を出せない人」のフラストレーションは「声を上げている人」へ
そういう人からの見え方こそ、いま社会が最も真剣に向き合わなければならないものではないか。
寄り添うということ
「声を上げている人」の声は自動的に「声を出せない人」の「置き去り感」を解消できない
むしろ「自分だってやっているんだから、あんただってやれるはずだ」というプレッシャーに
アウトリーチという手法
こっちに来れば良い、ではなく「そっちに出向いて行く」必要がある
合意形成の第一歩
こっちに来い型のアプローチ→そっちに行くよ型のアプローチ
押し付ける→引き出す
自分の世界に引きこむ相手の世界に飛び込む
相手の気持ちに合わせる
→初めて両者の間に対話の回路が発生
やれることはたくさんある
介護保険適用外のサービス
共同保育
投票所への移動支援
地域にいる「先生」の存在
世の中の矛盾を知っている人
その矛盾を生きている人
2つの疑問と批判
そんなことをやって意味があるのか
どうやったらいろんな人とつながれるのか、そのキッカケがつかめない
どうせやるなら、もっとデカイこと
だからダメ
目の前のことに向きあえなければ、結局は足元をすくわれる
東日本大震災後、仮設住宅の悩み
地域コミュニティ
すでにあるもの
こういうものだ、というやり方が集落単位で根付いている
  伝統的手法、文化、風習、作法
中高年男性のプライド、現状
お茶飲みの場所などに出てこれない
パチンコへ
アルコール浸り
周囲からの視線
ヤケになり生活リズムの崩れ、DV、介護虐待
「誰かがその人のために仕事を作ってくれる」しかないと想い浮かぶことの怖さ
さじを投げているのと同じ
→社会全体にとってマイナスをもたらしている、社会全体が損をしている
生き延びたものの罪の意識「サバイバーズ・ギルト」
2010年 自殺・うつによる逸失利益2.7兆円
社会の損失から見ると…
遺族への影響
後追い自殺
これら全てがもたらす社会損失は2.7兆円の何10倍になるのか…
隠れた稼ぎ頭
誰かが仕事をつくってくれる、という以外の札を自分の引き出しに持っている人
そのための成功事例のアイディアを普及・蓄積していくことは、(今の)日本社会にとって小さいものではない
このような人を正当に評価できる社会
「あなたの力が必要です」
「支えられ手」にしない、「何かやってあげましょう」ではない
あなたの力が必要です
自分は支え手だ!
面倒くさいこと→これは民主主義の面倒くささと通じる
足湯
足湯(お湯)は手段
目的は「話す空間」と「時間」の創出、信頼関係の不足を乗り越えること
「つぶやき拾い」
これらを役所や自治会に伝えていく
炊き出し
炊き出しは手段
目的は共同作業の中で信頼関係を作っていくこと、共同炊事
そんなことか、と思うことの問題
問題は創造性がないこと…創造性とは人と人をつなぐ、関係性を構築するための創造性
民主主義の問題と創造性の乏しい社会
創造性に乏しい社会
蛸壺化
一度、コミュニティから外れてしまうと一気に孤立する地域や社会
この創造性が乏しいと、異なる立場との意見交換に耐えられない
意見調整、合意形成ができない
ヒーローを求める代理戦争へ
求められる高度人材
創造性がある人材
自分で考えることが出来る人
コミュニケーション能力
他者と関係をつくり、議論し、調整できる能力
民主主義の面倒くささを引き受け切れない社会で、そのような人材は育つのか?
民主主義は生産性と対立しない
都市部のコミュニティ
都市の地縁関係
あるものか、いらないものか
人との関係性を作るノウハウなどがない
→日本の特徴
高度経済成長が原因
社縁、企業共同体の存在
地方から都市への大移動
地縁から社縁への所属替え
男性の場合は、血縁・地縁が社縁に従属するという傾向
そのため、男性はこの「3つの縁」と「無縁」に二極化しやすい
高度経済成長がもたらした社縁により、それ以外のコミュニティは不要に
そのため会社に属すること以外に関係性を構築するノウハウが発達しない
ソーシャルワークの弱体化と軽視
貧困は解決済みの問題とみなされる
ソーシャルワークの定義
個人的であり、社会的、そして政治的な技法
関係性の調整
人と人との関係性を結び直す
日本にはSWに対する誤解が蔓延し、そして福祉施策などに回収されたため、社会性と政治性を失った
人と人との関係の結び直しのスキルやノウハウの蓄積が少ない
無縁からの縁づくり
3つの縁に頼らないスキルとノウハウ
海外
 オバマ大統領はシカゴの貧民街で「コミュニティ・オーガナイザー」→大統  
 領選へ
 グラミン銀行のモハマド・ユヌス→ノーベル経済学賞
韓国
 社会的企業育成法→セツルメント運動
ただし、その積み重ねの全体を理解しようとしなければ、同じ成果は上げられない
ナショナリズム
関係調整と合意形成のスキルとノウハウの蓄積が必須
日本にはこのようなスキルが十分にないことを認める
→そこから改革改善へ具体的に取り組む
まとめ
ヒーローを待っていても、世界は変わらない
血縁、地縁、社縁、それぞれに活性化の余地はある
それだけでは、もはや十分ではない
他との交流が必要
そのときに「人と人を結びつける」工夫と仕掛けがひつようで、異なる文化、異なる作法を持つ者同士の信頼関係づくりを可能にする
これは積み重ねによるもの
うまく行った事例より、うまくいっていない人たちの間に多く蓄積されている
先生の存在
支え手、支えられ手がわからないような地域社会
役割が固定せず、固定化しないから、支えられることに対する抵抗感もなく「お互い様」の実践が可能
豊富化された工夫が横(社会)と縦(政治)にと普及していけば、多くの人が創造性を発揮してお互いの接点を探りあう状態が生まれる
自分たちで調整し、納得し、合意形成に至ることが、自分たちの力量の表れと認識
創意工夫の開発合戦が起こり、創造性が最大限に発揮される社会
課題が困難であればあるほど、人は創造性を発揮しそれを楽しく感じる
意見が異なる人との会話こそ面白く感じる
こんな面白いことを誰かに任せるなんて、もったいない
ヒーローは私たち、なぜなら主権者だから
できることはたくさんある
ヒーローを求める人の焦りや苛立ちに寄り添い、一緒に解決していくことこそ自分へのチャレンジ
課題を自分のものとして、そこから工夫が見つかれば、それが自分の財産
→自分で決めることが常識である社会へ
その積み重ねだけが社会を豊かにできる


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書籍代を大幅削減「その本、図書館にあります。」 | 着ぐるみ追い剥ぎペンギン





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