読書メモ『PPKのすすめ』

このPPK(ピンピンコロリ)とは、言葉の通り「死ぬ時までピンピンしていて、死ぬ時はコロリと逝く、という生き方。実は高森町が発祥の地。約30年前に社会教育主事だった北沢豊治先生が健康長寿のためのPPK運動なるものを発案。日本体育学会で発表したのである。


CiNii 論文 -  245 中高年齢者の体力つくりについて : 高森町におけるPPK運動






その後は、佐久市でこのPPKという思想をもとにピンコロ地蔵を発案。今では大きな観光の一つとなっていると聞く。 また、『PPKのすすめ』は平成10年に医事評論家の水野肇さんらが編集・出版し、このPPKという言葉が全国に広まったと言われる。


 自分の中でも、長野県の老人医療費が全国的にみても低いこと、そして今一度その特徴を見返して、現状とのギャップを確認するためにも、この本を今回手に取った。以下は、そのメモ。

PPKの定義

・「健やかに老い、健やかに天寿を全うすること」
・「安心」というブランド→医療の24時間体制→早期発見・早期治療→医療費節減へ

健康な地域づくり、とは?

・「予防」と「健康教育」
・3つのキーワード→「参加」「自助」「自決」

医療費削減のロジック

・これからの高齢化時代に医療費そのものの上昇は止められない
・医療を受ける前の在宅の部分に公費を使うべき(福祉の部分で在宅を担う)
・自ずと医療費上昇の抑制につながる

増え続ける老人医療費

・2025 社会保障費は所得の30%、その他税を合わせて60%後半になると言われている。 ・社会的入院、病院のサロン化→これを打破するのが介護保険制度だったはず
・窓口負担の上昇→定額負担から定率負担の時代へ
・この中で「長野県に学ぶ」ということ
・全国の県が長野県並みの医療費になれば、30%、約2兆5000億が浮く計算。

長野県の健康の歴史

・寒い地方は寿命が短い、というのが常識だった。主な死因は脳卒中
・S40年代は脳血管疾患抑制の目的で、全県的に「一部屋暖房運動」「減塩運動」などを行った
・1985の県民平均寿命は全国で男性4位、女性7位
・1990の結果は平均寿命は男性1位、女性4位へ。その原因は独特の食生活(蚕のさなぎやイナゴ、山羊乳など)と言われたが…
・老人医療費は70歳以上は全国一、これは北海道の半分。全国平均より△20万円。
・在院平均日数は最低で、在宅介護率は高い
・しかも100歳以上の老人は多くない →まさにPPK

長野県の長寿の謎を研究するチーム(厚生省)による分析

「なぜ、長野県は長寿県なのか?」
理由1「在宅介護、医療環境が整備されている、平均在院数は短い」
・医療機関が在宅ケアをすすめる風土
・地域のかかりつけ医が多い
・利潤追求型の医師が少ない。
・往診なども盛んに行い、健康に生きることを住民の一緒に考える姿がそこにはある。
・医者にかかることは贅沢という価値観(「医者をあげる」という表現)
・病院に行く、入院する、とは村を離れること、と考えている住民も多い
理由2「自宅での死亡割合が高い」
・入院医療費が特に低く、在宅医療が善処
・長野県の医師は使命感が強い。挑む、という姿勢が感じられる。
・かかりつけ医が多いのも特徴。
理由3「生きがいを持つ高齢者が多い」
・腰曲がり老人が多いがとても元気
・農作業現役+就業率高い
・H7国勢調査では高齢者の就業率は36.2%と全国一
・就業者ほど健康、というデータもある
・公民館や社会教育、地区衛生組織の自立、保健指導員、食生活改善推進員などの活動
・少しくらいの病気なら医師にかからず、うまく付き合う人が多い

長野県のPPKのその他の秘密

・健診の受診率は決して高いわけではないが、その後のフォローは積極的→在宅の死亡率は高い
・保健師も健診活動以外の活動が多い。訪問や相談などは盛んで保健師と住民のつながりは深い
・県ごとの人口あたりの保健師の数は全国4位
・諏訪市中央病院は在宅医療の中心地、保健師や訪問看護師が医師と対等な立場でコーディネーター役
・しかも集団健診については1959年からJAの集団健診が開始(鹿教湯温泉方式)
・また保健推進員制度もあり、住民が主体的に健康な生活を促進する活動を行っている→松川町では公民館運動と結びつき、全国的にも有名
・高齢者の就職率、持ち家率が高く、離婚率が低い→在宅ケアが充実する素地がある (但し、地域の因習が深く残っており、その分家族※特にお嫁さんに負担が掛かっているのも事実)
・保健活動の充実、食生活や自然条件も整っている
・学ぶ県民性→寺子屋、公民館、実学主義
・もう一つの県民性→理屈っぽいが良い事だと思ったらまじめに取り組む

長野県の食生活改善運動

・S40年代にボランティア活動から始まる
・S50年代半ばに県と県栄養士会で県民減塩運動→15.9g/日から3年後には11gまでに減少

長野県の保健推進員、保健補導員制度

・「なったら楽しく」という雰囲気、OB会議も存在
・毎月研修会を開催、また情報誌の発行や健康イベントの企画・開催
・須坂では戦前より存在

長寿の本当の意味

・健康で80歳まで生きられるからこそ、人生80年時代と呼ばれるべき。寝たきりで生きても意味が無い。
・QOLという考え方
長生きはできるようになったが、本当に長生きを喜べる地域づくりが必要


「インフォームド・コンセント」と「インフォームド・チョイス」

・「インフォームド・コンセント 説明と同意」→医者から病状や治療方法などの説明を受けて、患者や家族がそれに同意する権利
・「インフォームド・チョイス 説明と選択」→医者から病状や治療方法などの説明を受けて、患者や家族が生き方や死に方を決定する権利

つくられた寝たきり

・脳卒中などでICUへ、24時間介護からその後リハビリ
・1〜2ヶ月で退院、しかしその後は来院しなくなる
・その後は褥瘡を作り失禁状態に→寝たきり状態へ
・理由
1位 若夫婦不在による介護力の不足
2位 安易なオムツあてによるオムツ失禁→自立・自律性を損ない寝たきり状態を促す
・「寝たきり」は「寝かせきり」から生まれる

自立・自律性の大切さ

・北海道の病床数は充実しているが、ここで一つの仮説が。
・「病床数と有病率は比例するのではないか?」「過度の医療供給が過度の医療需要を作っているのではないか?」

医療、保健、福祉、介護をトータルで

・入院中は高度医療を施すが、退院後のケア(福祉や介護)を考えていない →だからこそ、医療、保健、福祉、介護をトータルで考えなくてはいけない 
・介護保険の本来の意味は、ここにあった。
予防・保健活動の充実
   ↓   
それでも病気になった場合の医療体制の充実
   ↓   
それでも寝たきりになってしまった人への手厚い介護(福祉)

南信濃村の事例

・1994福祉の里の設立。デイ、特養、在介センター、独居老人用住居など9つの福祉施設が一つの場所に
・成果は介護疲れ等に自殺者の減少、若い人の雇用確保、村外からの移住者増加、孤独の解消、介護者の軽減→福祉日本一を目指す
・山道の効能も。山内部ほど寝たきり者が減少というデータも。 


今の現状を考えると、いくつか形だけのシステムになっており、きちんと機能していない点がある。こういうところにきちんとメスを入れて、本当に住民の方が安心して暮らせる町を作っていかなくてはいけない。


今日のアプリ

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 今回のこの本も、このアプリから予約。図書館にて貸し出し可能になるとiPhoneにメールを飛ばしてくれる優れもの。



今週のキラーフレーズ



今週のエクササイズ

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