ミダスタッチ、現代への警鐘(20101029 イデア朝大学 月尾嘉男教授 講演会より)

東京大学名誉教授  月尾嘉男先生の講演会に出席。主催は、前回、飯田青年会議所の総会でご一緒した伊藤茂雄さんらが組織する「NPO法人イデア朝大学」。

月尾教授は全国で仰山塾という、環境をベースにした地域づくりを一緒に考える組織を立ち上げている。長野県内でも白馬は発足したあと、南信州でも発足した時から先生の趣味のカヌーに同行させて頂いている。

前回の20091029の月尾先生との天竜川でのカヌーの様子。上の写真は月尾先生。速い速い!
下の紫のダッキーの前に乗っているのは、実は僕。


今回もカヌーができれば、というお話しだったが天候が悪かったせいもあって、中止。その代わり講演会からその後の懇親会まで、風の学舎の方々や仰山塾の方々のご好意でご一緒させて頂いた。
以下は、先生のご講演からメモした内容。

テーマ;「滅びる文化 残れる文化」

◎カルタゴの例※カルタゴの事をローマ人はポエニと呼んでいた。

・ポエニ戦争;新興国ローマと老舗で隆盛を誇っていたカルタゴの3回にわたる戦争。
・このあたりは塩野七生さんの本が詳しい。僕は挫折してしまった。
カルタゴの敗因は?
・金儲けが最高の価値観だった
・そのため芸術、文化などは無用だった
・倫理、法というような視点もなかった
※韓国は国家予算の7%を文化芸術に。日本はわずか0.4%にしか過ぎない。
韓流映画に踊らされる日本人の原因がここにもある。

◎ベネチアの例

・1204第4回十字軍、キリスト教軍がコンスタンティノープルへ。ベネチアはその支援を。
・レパントの海戦ではカソリック教会側を支援。
→当時世界一の艦隊と呼ばれていた海軍を率いて大活躍。
ベネチアの衰退※なぜ、このような強国が衰退の道へ・・・
・大航海時代の到来
→ヨーロッパ人が航路を開拓、船を持っていたベネチアの優位性が弱まる
・世襲のビジネス、世襲の政治が台頭→保守的な風土、全くやる気がない、経済的観点から
・少子化が効率的という思想


この2つの事例は、今日の日本と比較してどうだろうか?このままだと、大変な時代になる、と予想できないだろうか?
どんなに経済が発展しても滅びる→その理由は何か、考えてみること。



◎日本の多様性の欠如

・生物学の世界と比較すると、現状は「過剰適合」の悲劇という問題
→「ハチドリ」と「トケイソウ」の関係
・共進化の典型的な一例であるが、この関係はどちらかが変わると、この関係は成立しなくなる「もちつもたれつ」の関係。

今の国と地方、行政と住民、政治家と企業・・・どうだろうか?

「生物」「情報」「社会」という3つの切り口から
・「生物」の多様性の欠如
       外来生物の脅威、すぐに侵略されてしまう日本の生物
・「情報」の多様性の欠如
       違わなければ価値がない(英語力低下、留学生比率の低下など)
       日本の新聞の特殊性(Y新聞帝国→情報多様性が無い)
       日本のTVの力(WBCなどは本場アメリカでは全く盛り上がっていないのに、あたかも盛り上     がっているような報道など)
・「社会」の多様性の欠如
       民族人口比率、経済保護主義、ジニ係数(経済格差)、男女格差・・・
    CDOの存在
     世界的な一流企業では、Chief Diversity Officer(最高多様性責任者)を設置。

多様性がある世の中を作り出していかないと、
何か変化があったときには対応できない体質になってしまう。

◎技術進歩史観への疑問・・・自然を畏怖し、自然に沿う生き方の再考
・自然を熟知しているアボリジニ族
・いつも7世代後の子孫の事を考えて行動するイロコイ族
・改造を拒否するナバホ族(とうもろこし畑の話)
※昔の日本にも、いい時代があった。参考図書『逝きし世の面影』


今の日本の変化を表すキーワード

・増大社会から減少社会へ
・中央集権から地方分権へ
・仕事優先から生活優先へ
・物質経済から情報経済へ
・大量生産から地産地消へ
・世界共通から地域独自へ
・官公依存から住民主導へ



これからは、
「過去の延長線上で物事を考えるForecasting」から
「未来のあるべき姿から現在までを遡って、やるべき事を考えるBackcasting
の考え方が重要になる。

講演会終了後は、風の学舎で月尾先生を囲んで仰山塾IN南信州の方々と一緒に交流会。秋の味覚の王様「マツタケ」で、美味しいお酒と楽しいおしゃべりを。



後日、月尾先生とのメールのやり取りで、「ミダス(マイダス)タッチ」というギリシャ神話の一説を知る。

簡単に説明すると、こういう話・・・
神様の従者を助けたミダス王がそのお礼として、
手に触れたものを全て黄金にする能力を手に入れた。
触った木も石も全て黄金になり、ミダス王は最初は喜んだ。
だが、食事をしようと食べ物を触ったら黄金と固まり、
水を飲もうとしたら金の氷となり飲むことができない。
そして最後には最愛の娘に触ると、金の彫像と化してしまった・・・

この話でわかるように、決して富や財が必ずしも幸福には直結しないことがわかる。
市場原理主義に侵されている日本を含めた現代社会に警鐘を鳴らしている。

月尾先生には、
「人間としてどのような位置に立つべきか、考えなさい」という言葉を頂いた。

僕も「人」として、道を見失わないように生きていきたい。

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