地区別計画の功罪2

前回に続けて、地区別計画の功罪について書いてみたい。(以前書いたものなので前回のブログと重複する点もあるが、ご理解してほしい。)
当町の第5次振興総合計画の基本計画の一つに「みんなのちからをつなぐ自治と協働のまち」がある。その中でも特筆すべき事業が、「地区計画策定事業」である。今でこそ、この地区別計画は住民参加の手法、そして財政の執行の健全化のツールとして当たり前になっているが、当町はなんとこれを昭和62年の第3次振興総合計画策定時からスタートさせている。三位一体の改革、そして金融不安等で、各自治体の周辺の雲行きは怪しくなり、限られた財源の中で「住民主体」のまちづくりを進めていく上で、有効なツールとして導入する自治体も増えてきていると聞いている。
が、しかし最近気になっていることがある。それは、平成20年9月1日に開催された「南信州自治研究会」において、下伊那地方事務所及び下伊那町村会と学術提携を結んでいる立命館大学の教授より指摘された点である。「ぜひ南信州でも地区別計画を導入している高森町と阿南町の職員のみなさんから課題を聞きたい」とのことで、担当として正直な意見を述べた。まず「予算規模縮小による更なる事業の精査、そして選択」「それに伴う既得権の消滅の説明、合意形成」「ハード面への偏り」など。すると教授たちの感想はこうである。「その答えを聞いてびっくりだ。三位一体の改革等で財政状況が厳しい自治体が多い現状で、この地区別計画はその有効度に期待が持たれている。(地域の目、そして優先度にて事業が精査されるというイメージか?)しかし今の課題はその現状にまったく逆ではないだろうか?」最近、地区別計画の導入を検討している背景には、確かに教授らがおっしゃることが関係している。自分の頭を整理するためにも、数式に表してみた。

《高森町の場合》
■S63地区計画策定開始当時・・・『地区計画要望金額=予算』もしくは『地区計画要望金額<予算』
※地区計画により提出された要望が全て通ってしまう時代。
※ここで気になるのは当時の広報誌によるとすでに「財政的に厳しい時代」「住民視線にたった効果的な事業を行うためにも・・・」と説明している点。

■そして今現在は・・・『地区計画要望金額>予算』
※地区からの課題は複雑化し要望も増加する一方、それ全てを解決する予算がない状態。

《これから地区別計画の導入を検討している自治体の場合》
(自治体への要望>予算)-(住民視線や地区の優先度から見て無駄なもの)=地区計画予算
※住民からの行政サービスは高度化多様化する一方、財政的には厳しい状態。その中で住民の視線や地域の視線でその課題を検証し、「本当に必要なものは何か?」のふるいにかけ、実施する事業を決定していく。 同じ南信(長野県南部)に位置している阿智村では、地区別計画導入の際にはSWOT分析を行うなど、いわゆるNPMを導入しながら「分析」を行い、しかもそれが「可視化」されている点は大変見習うべき所である。

ここで、これからのわがまちの地区計画にとって必要と思われるものは3つ。
①地区計画を作成する上で、特に事業の優先度を決定する際に、客観的に数値等で分析されたデータ。
※優先度を決定するということは、声の大きな人の意見を聞いたり、2年という任期がある地区長にとって大変悩ましいところである。だからこそ、結論までに導きだすためのプロセスが大切。それを少しでも効率的に手助けできるようにNPM的な手法を用いて行うことが大切である。
②徹底した情報公開
※①の手法にて優先度を決める際、その結果はもちろんのこと決定されるまでのプロセスを公表することが大切と考える。
③地区ごとの将来像の再確認と再共有と検証
※地区計画を策定するにあたっての「大前提」がある。「地区毎に計画を策定する本旨は?」という点である。20年も続くと「計画策定」が目的となり、本旨を忘れてしまう。あくまでも地区計画の策定は①「地区特性を反映」できる点と、中期計画のために役員が交代してもぶれないという②「継続性」にあると思う。ここで述べる「継続性」とは「前例踏襲」という意味ではなく、「このような地区になるんだ!」という将来像がぶれない、という意味である。

NPMの利点を上手に利用し「見える化」を行い、将来像に基づいた「継続性」と「検証」が必要となる。「まち」や「地区」の将来像とは「普遍的」なものであるが、その手法については「検証」を常に行い「不変」を防ぐことが必要となるだろう。

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