鹿児島の柳谷集落、通称「やねだん」
鹿児島の柳谷集落、通称「やねだん」の豊重哲郎自治公民館長の講演会が、飯田市公民館で開催。全国地域リーダー養成塾にて、明治大学の小田切徳美教授より「この話を聞いて泣かない奴は、今すぐ養成塾をやめたほうが良い」と言われたことが、今でも強烈に印象に残っている。
やねだん
研修終了後、すぐにDVDを購入した。それ以降ずっと豊重さんから直接お話しを聞きたいと思っていた。
MBCショップ 「やねだん~人口300人、ボーナスが出る集落~」DVD | MBC南日本放送(鹿児島)
やねだんがめざしたもの
- 「行政に頼らない集落づくり」
- 地域再生のキーワードは「子ども」と「文化向上」。文化向上を目指すために空家改修を行い、全国から画家や陶芸家などを招致し定住してもらっている。
- すべては「感動」させること。感動とは感謝や喜び。
- 豊重さんが館長になるまでは、自治公民館長は1年毎の輪番制だった。豊重さんは55歳で就任してから15年が経つ。
集落を経営していくためにの「企業・会計・原則」
- 集落を経営していくうえで重要なのは「企業・会計・原則」。
企業とは「人財」
- 企業とは「人財」。いつも「3+3+3+1=10」と考えている。
- 上位の3割は黙ってても動けるし、学べる人。
- 底辺の1割の方をどのように動かすか?そのために「感動」が必要。
- 人は有頂天になったら、他人は他を向く。
- 自分は、いつも誰がきても腰に手ぬぐいをまいている。(飾らない、偉ぶらない。)
- 人を動かすには、考えさせること。全部言ってはいけない、怒ってもいけない、命令はだめ、開き直らせたくらいが成功と思っている。
- イベントも高齢者と子どもが動けば、その中間世代は動かざるを得ない。
会計とは「自主財源」
- 現在、焼酎や土着菌、そしてそれらの加工が主な収入源
- 現在は85歳以上の方に年1回ボーナスを出している
- このような活動をしていると、医療費や介護保険料が鹿児島市平均より年40万円安い、という結果が。
- 年間どれくらいの予算が必要で、どのようにお金が動いているか?また上記のような成果が出ている、ということをしっかり表すこと(帳簿)も、この会計という考え方では重要。
- また、お金は(地域づくりやリーダー担い手の)「担保」「保全」と考えている。
原則とは「総力戦」
- 補欠はいない、と考える。やれる人だけでやってはダメ!
- 反目、反対している人をどのように巻き込むかがカギ。このあたりは戦略的にやってきた。
- 例えば悪口を言っている人ほど、「ふるさと創生塾」の講師にしてしまう。
- ただし総力戦にはリーダーが不可欠。リーダーがいないと、軸がぶれる。遠心分離機と同じ。
時には机から飛び出し、ステージ前にきて身振り手振りで熱く話をする豊重さんは、とても70歳には見えなかった。
休憩をはさんで、今度はパネルディスカッション。パネラーは豊重さん、東京大学大学院の牧野篤教授、ひさかた風土舎の長谷部三弘さん。
公民館、地域活動について
《ひさかた風土舎 長谷部さん》- 開会の際に歌った「公民館の歌」から考える。1番歌詞の「郷土をおこす」の「おこす」は「外からの刺激で、停滞しているものを活き活き」させること。2番歌詞の「郷土のゆかし」の「ゆかし」は、動詞形は「ゆかしがる」。「見たがる聞きたがる知りたがる」、すなわち「興味を持つ」ということ。3番歌詞の「郷土に生きることを楽しむ」は「自慢できる、誇りに思えるものを見つける」こと。
- よく「物事は原点にかえることが重要」と言われるが、飯田市公民館の活動は、この歌に戻ればよいと考える。
- 「地域」の定義や範囲は「子どもが移動できる範囲」と考える。文学的に言えば「お寺の鐘が聞こえる範囲」。
- 地域づくりは物語づくり、ドラマづくり。舞台は集落。
- また重層的な活動が重要。ひさかた風土舎が進めてきた鎮守の森構想の実現も、13の集落が自立することを目的としたきた。
- その時に、それぞれの集落ごとに3つの宿題を出した。「集落ごとの花木を決めること」「集落ごとに実践集団をつくること」「集落ごとに行動計画を策定すること」
- 風土舎の「風」とは外からの刺激。今回で言えば豊重さんや牧野教授。「土」とはそこに住む人。「舎」は人が集まればできる。場所は関係ない。
《東京大学大学院 牧野教授》
- 新しい時代の到来。今までは中央からお金、情報、人が来ていたが、今後は地場の集落から新しい形が生まれ、それが全国へ広がる時代。
- 郷土を興す、ということは、今までは経済原則で入っていた。しかし、今の課題はお金では解決できない。
- 例えば人口40万人、予算規模2,000億円の豊田市でさえ合併により市となった中山間地域の人口減少を食い止められない。
- それでは何が必要か?と考えれば、それは「(やねだんの言葉を借りるなら)文化」。
- 楽しく農業ができるとか、都会ではない人付き合いがある、など。実際、その集落では40年ぶりに人口が増加。
- こういう流れから新しい経済が生まれるのではないか?
- その時に間違ってはいけないことは、住民にとって「活躍できる場所」「居場所がある」という条件。
- 「和を以て尊しと為す」の和は、日本の悪習である「事なかれ主義」ではなく、「対立やここの自己主張が可能」ということが前提になっている。この意味を忘れてはいけない。
- 飯田市の人柄は、「議論好きだがつぶし合わない」ということ。飯田でフィールドワークを行う学生には、受け入れられた、認められたと感じることができる。
豊重さんへの質問から
《人材育成について》- やねだんふるさと創生塾は、鹿児島県知事が視察に来たことがキッカケ。
- 初回は県内の行政職員だったが、2回目からは全国応募へ。
- 講師は集落の人や全国から費用を出して招いている。
- H24年は5/25~5/28の予定。総務省の椎川忍氏やカリスマ公務員の木村俊昭氏、奈良県十津川村長が講師の予定。
- まちづくりのプロとアマの違いは、アマは「自分だけが楽しむ」が、プロは企画力、創造力、取材力、表現力などを駆使しながら「人を巻き込む」
《寺子屋》
- ある事件がキッカケ。本当は学びたいのに今の教育システムではそれが不可能。だからこそ集落で寺子屋を。
地域経営とは?
《牧野教授》- 自立と孤立をはき違えてはいけない。自立=自己責任と教えられてきたが、これは不可能。孤立に進んでしまう。
- 自立できる条件とは、1人ではなく「頼ったり頼られたりできる」という関係性がある、ということが条件。
- 都心部のフリーターが中学生時代の人間関係を頼り地方に戻っている、という調査結果もある。
- 本来、学校や地域とは、こういう機能を持っていたはず。
- 今後の地域経営やリーダーの役割は、こういうところだと考えている。
- つぶし合いの競争ではなく、高め合いの競争。お互いを尊重する土壌などができるシステムづくりが必要。
《長谷部さん》
- オンリーワンの地域づくりを目指すべき。
- 行政は柔軟性のある縦糸。これは制度やトップダウンを表す。
- 地域は多様な横糸。
- そして公民館は、それを紡ぐ力。ボトムアップ。
《豊重さん》
- 地域の範囲とは半径10m~100m。まずは家庭や隣近所が基本。
- 経営とは組織体制と数字。組織体制とはどこを動かすのか?それはやはり近くの人。
- 数字とは分析し人をやる気にさせるツール。
- そして人にはそれぞれの強みがあり、それに基づいてテーマを決める。
- 人をやる気にさせるには、わからないフリもする。
- 人が活躍できる場所さえできれば、リーダーはわき役に徹する。
- これを構築するには3~5年かかる。
後継者問題とリーダー育成について
《長谷部さん》- 風土舎の後継者はいない。こういうグループは流れ星のようなもの。だが、風土舎のようなグループがたくさん出てくることを望む。
- リーダーとは人が選んでなるものではない。実践があるからこそリーダーが生まれてくる。
《豊重さん》
- リーダーがいない、というのは妄想。
- リーダーが生まれる条件は3つ。1つは「担保・保全」。これは自主財源、包容力、年齢など。2つ目は「支える組織体制」。これがあると後継者は安心する。3つ目は「リーダーに向いている顔」がある。人柄など。40歳代のリーダーが適任。
《牧野教授》
- 大学でも生徒に考えさせることを念頭に。生徒は一人一人すごい能力を持っている。
- 停滞や閉塞感ではなく、ざわざわした感じ、かき混ぜ続けていくイメージ。ここからリーダーは生まれる。
- 飯田はすでにこういうシステムがあると思っている。
それぞれの今後
《豊重さん》- 2つのことを考えている。1つは「幼児の寺子屋」。お年寄りが若い世代へおむつの作り方などを。
- もう1つは「エネルギーの自立」。5~10年後には風力、水力、太陽光発電でやねだんをまかなう。余電は新たな自主財源へ。
- やはり「こども」が宝。将来は100万円の奨学金を設立したい。
- 不満ではなく、必ずアイディアを付けて提案。個人戦ではなく総力戦で。これを続けていきたい。
《長谷部さん》
- 地域の自立と個人の自律が重要と考えている。
《牧野教授》
- 飯田のそれぞれの公民館の取組が基本になりながら、日本全国へ発信してほしい。
その他
- 今回の講演会では、何回もメモを取ることができなくなった。それほど聞き入ることが多かったからだ。
- 実は大会長の北沢豊治さんは、高森町が発祥の地であるPPKを提唱した方。
光明功徳佛 ピンピンコロリ地蔵 概要
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