カッセル大学 アーリング教授
「ドイツの空間計画(日本でいう土地利用計画のもの)について」・ドイツでは水、空気、緑などの要素が空間計画の中に組み込まれている。
・2005年からはSEA(Strategic Enviromental Assesment)※戦略的環境アセスを導入し、空間計画と環境アセスの協調を試みている。
・空間計画にはOverall Spatial Plannning System(開発規制の性格)とLandscape Plannning System(景域保全の性格)があり、お互いに均衡とバランス、チェックを行いながら計画が作られる。
・ここに前述のSEAが加わり、日本でいう広域連合のような組織の中で協議を行いながら計画を策定していく。
・成熟した民主主義社会では、土地利用に関して「個人の利害」「公共の利害」が発生する。
・この利害調整をどのように行うのか?がカギであり、ドイツの歴史でもある。
・居住地域と道路が増えれば増えるほど、ある一定のレベルで今度は抑制しようという働きが生まれる。
・こういう計画の成果は2つ「秩序ある開発」「計画的な開発」
土地利用計画の6つの定義
1:ゾーニングがされていること2:マップとテキストがあること(特にテキストでは詳細な説明とあるべき姿が記載)
3:中規模の範囲(1,000~10,000km)であること
4:時間軸を持つ(計画期間15年間で10年経過くらいから次の計画策定へ)こと
5:その地域を形成している集落の計画を包含できること
6:全ての公共的な計画に影響や拘束力を持っていること(土地所有者や企業にも影響がある)
計画策定の上での合意形成の3つのポイント
1:フレームワークや道筋がない(結論ありきでないこと)
2:双方向の原則(ボトムアップとトップダウンの繰り返し)
3:SEAを用いること
→今後必要なものは、コミュニケーションやネゴシエーションなどのインフォーマルな手法の発見
名古屋大学 清水教授
・日本の国土利用計画は5地域(都市、農業、森林、自然公園、自然保全)に分類される。
・ただし、戦略的に空間をどうしていくか?という機能は弱い。
ライプニッツ研究所 レスラー研究員
「都市気候変動をどのように土地利用計画に組み込んでいるか?」・ある特定の地域を、植栽の様子や道路面積などから13のカテゴリそこから57のユニットにわける
・このユニットの考え方は、その地域のみならず他地域でも流用が可能
・このユニットごとに時間帯による気温を測定し、どのような土地利用が快適かを導き出す
・このようなデータを行政や政治家と共有することによって、どういう土地利用をすればよいか判断するときの材料となる
ディスカッションより
計画の「統合」と「総合」について(統合「integlation」 総合「comprehensive」)・日本の振興「総合」計画を見ればわかるように、日本では総合という考え方が一般的であり、総花的なものがほとんど。
・統合とは、トレードオフ(一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという二律背反の状態・関係のこと)が成立し、優先度がしっかり決められているなかで、複数以上の分野が一緒になって考えられている状態。
・もし「統合計画」を定義すれば、多角的に物事も見ながらも、優先度を決定して戦略的に実行していく計画のこと
質問者から
「統合」に関して、例えば環境と防災、という視点から・被災した状態とは、時間スケールで考えれば短期間で発生した環境変化と言える。
・だからこそ「環境」「防災」という分野で考えるのではなく、同じ組織で対応できるはずなのだが…
・基本的には、そこに用いる資源(人や知識、お金など)は一緒のはず。
日本で「統合」が進まないボトルネックは?
・そういう視点で考えることができる人がいない(タコツボ的な発想)
・そういう視点で動ける組織がない(行政に代表されるタテワリ)
・そういう視点で国法が制定されていない(法律も同様)
「地域」という考え方
・日本はどうしても行政区で考えがちだが、アーリング教授やレスラー研究員のように、ドイツでは自然環境や気候区分、歴史によって地域をとらえ計画を策定している。(景域という訳語からもわかる。)
・この範囲は別の言い方をすれば「ボトムアップとトップダウンの議論ができる範囲」と定義することもできる
感想
1:(どんな計画においても)最後は住民参加やステークホルダー(利害関係者)の合意形成を行う手法が重要であること(しかもインフォーマルな手法)2:総花的に考えるのではなく、これからは限られた資源の中で「統合的」に物事を考える必要があること
3:最終的に決定するのは「政治力」であるということ(ドイツでは特にこの点の役割分担が歴史的に見てもしっかりしていると感じました)
この統合とは「経営的観念」であり「戦略的思考」とも言い換えることができる。どこかで僕たちはまだ過去の延長線上で物事を考えてしまいがち。「どういう姿が住民が望む姿なのか?」「どういう将来が望ましいのか?」のビジョンを明確にして、対象も絞り、さらにはそれぞれの利害関係者(ステークホルダー)の役割を決めながら小さな成功や成果を挙げていく、ということが「統合」という考え方。
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